『徒然草』にこのような冒頭から始まる章段がある。(第137段)
花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは。
(桜の花は満開の時だけ、月は満月だけを見て楽しむものだろうか)
 雨降る日に、雲の向こうの月を想像する。
 夜明け近くになってようやく現れた月のかすかな光を感じる。
 いよいよ花開こうとする桜の枝先を見る。
 一面に花びらの散った庭先を眺める。
 それらに親しんで、「花・月を楽しむ」と言えるのではないか。
 
 そのように兼好法師は言うのである。
 
 
 「学校生活」を考える。
 
 雲ひとつ無い青空に、白くまぶしいグラウンド。
  昼休みに見ると、この組と隣の組とでサッカーに興じている。
 無心に、ボールを追って駆け回る。一進一退のゲーム。
 ひたすら体を動かす充実感。
 
 クラスの枠を越えて、友人との会話に興ずる休み時間。
 昨日のテレビ番組のこと。
 あるいは、おもしろいことを言っていたクラスメートのこと。
 尽きることの無い話題。
 窓の外は。
 曇り空に、ぱらぱらと降り出す雨。
 
 何を言うでもなく、友人と自動販売機に行く。
 ただジュースを買いに。
 たったそれだけ、と言えば事実。
 けれども、こうやって時間を共有して6年目。
 この「なんとなく」も、もしかしたら今年で終わる。
 いつもいつも、ケヤキの木の下を通り抜けていた日々。
 
 ぼんやりと窓の外を眺める。
 目に鮮やかな桜の若葉。かすかに吹き抜ける風。
 ふと、また桜の花開く春を思う。
 その時には、この教室は別の生徒たちが生活しているという予想。
 
 
 小学校で過ごしたはるか昔の日々を思い返すのと同じように。
 今の生活も、じきに思い出の世界に変わる。
 
 
 昨日。
 今日。
 明日。
 すべてが学校生活。
 たとえ特別なことが無い日々のように思えても。
 そのどれもが、どんなものとも換えることのできないものだ。

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