来月の25日には

 いよいよ、修学旅行への日にちが実感されるようになってきた。ごく簡単に言うと、「来月の今日」には、飛行機に乗ってアメリカ行きである。
 
 今までにないことである。
 せきね自身はと言えば、2週間休みなしで働くことはしょっちゅうだが、さすがに24時間体勢で合宿や旅行の引率をしたことはない。
 
 今、「修学旅行、絶対無事故」のために、放課後の職員室では、計画の具体的な検討、資料作りや書類の整理で活気に満ちている。
 
 英語の先生たちは、教科の打ち合わせとともに、毎日修学旅行の話し合いをしている。
 イノウエ先生は修学旅行委員への指示や体験授業のために必要なことをまとめ上げていく。
 タカハシ先生は出かける大学の施設についてさらに具体的なことを打ち合わせしている。
 ジョン先生はこちらの状況をアメリカ宛てにメールを送り、タチバナ先生は旅行会社と飛行機や旅程についてひとつひとつ予定を確定させていく。
 イナダ先生は校長・教頭と打ち合わせをしたり、各担任が作った班編制名簿をまとめてしおりを作成したりしている。
 ツチダ先生はトップレベルの数学の指導計画を立てつつクラスから上がってくる書類ひとつひとつに真剣なチェックを入れ、サトウ先生は修学旅行のことと、校外へ向けての学校紹介の計画を、同時展開でさらっと作り上げていく。
 副担任の各先生たちは、何気ないふりをして担任から仕事を持っていって仕上げてしまい、またそれぞれのキャラクターで生徒たちの中に飛び込んでいって「最近どう?」と尋ねている。
 
 以前に修学旅行へ行った先生たちは、3学年チームにユーモアも交えて話を聞かせてくれる。とてもためになるし、とてもおもしろい。
「夜に見回りをしていて、部屋の中からテレビの音が聞こえるんですよ」
 ヒラヤマ先生が言う。
「睡眠不足は事故のもと。『このやろー、こんな時間まで夜更かしして!』と思って、叱ろうとしてバッと扉を開けたんですよ。そしたら……」
 ニコニコしながら言う。
「ウチとはちがう、どっかのアメリカ人がのんびりとテレビを見ていたんですよ。見回りに行く部屋を間違えていて。"『こらー!』のkの音"まで出かかって、しばらくの間お互いに見つめ合ってました」
 夜7時の職員室は、笑いに包まれる。
 
 担任チームは、はっきり言って疲労が深い。(もしかしたら、朝にぼーっとしているのが生徒諸君にバレているかもしれないね) それでも、もう少しやろう、もう少しがんばっちゃおうかな、という気持ちが次々と湧いてくるのだ。
 
 この学年は、担任全員が持ち上がってきている。
 かなり厳しく指導することだって、しばしばあった。
 どうしてわかってくれないのだろう、と悩むことなんか山ほどある。
 
 だけれども。
 6人の担任にとって、言うなれば学年全員が自分の担任している生徒であり、大切な弟たちであり、妹たちである。
 何としても、かけがえのない思い出になるような、良い修学旅行にしたいのだ。
 
 残り1か月、すべての教員がそれぞれの立場で、昼に夜に仕事をしている。
 "何かあっても後で笑い合うことができる修学旅行"のために。

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