ここのところ、エイ君とショウ君が放課後の教室にやって来るようになった。せきねが放課後の教室にいるのは、主に宿題忘れや課題忘れをやらせるために居残りをさせているからであるが、今年は担任でもなく授業担当でもなく、いわば何の縁もない(まあ去年は授業を担当した)にもかかわらず、何をするでもなく、彼らはせきねとしゃべってから帰っていく。
 
 もっと言えば、エイ君が熱心にせきねと遊戯王カードの話をして、ショウ君はそれを聞くでも聞かぬでもなく近くにいる。
 毎回いろいろ話をするが、エイ君の主張をごく簡単に言えば「遊戯王を遊びたい」ということなのだろうと思う。
 で、それに対するせきねの返事も一定だ。
「学校でやるな。家で遊べ」
「どうしても学校でやりたければ、学年トップの成績を取って他の先生たちにお願いしてみろ」
 
 ものごとには、説得力というものがある。
 知らない人間に「○×をやろう」と言われて、万事その言うことを聞き入れられるわけがない。
 実力の程はさておき、イイカゲンなヤツに何か言われたって「はいそうですか」と動くわけがない。
 
 少なくとも学校に於いて、遊びや楽しみを持ち込みたいのならば、それを許可しても学業に影響がないと認められるだけのまじめさが必要となる。
 ファンタジーの文庫本を読むために持ってくるならともかく、カードゲームなどと言ったら遊びの最たるモノだ。公認を勝ち得たいならば、おそらくは前例がないほどの真剣さが必要となるだろう。
 (そして、超一流と言われる私立校にはカードゲームでもアニメでも、それを認めるだけの懐の深さがある。"懐の深さ"は、その学校が一流か三流かを見抜く、ひとつの観点になる。"無原則"とは似て非なるものだが)
 
 つまり、「説得力を身につけろ」という意味で言ってはいるのだが、彼らにどれほど通じているかは、実際のところせきねには判らない。
 
 
 そんなことよりも、「せきねが遊戯王カードについて知っている」ということから面倒なことが起きないかどうかのほうが、ゆううつな考えになる。
 
 意外にも、30代の大人はアニメや特撮ヒーローやゲームについて詳しい。
 小さい子を育てている主婦が最新の仮面ライダーについてよく知っていたりする。
 子供とカードゲームでデュエルをしている父親が居たりする。
 せきね自身は独身であるが、ちょっとしたきっかけから遊戯王カードを持つようになった。ちょっとした暇つぶしでもあり、今の中学生や小学生たちのかなりの数が知っている遊びについて自分が知っておくのも悪くはないだろうとも思ったからである。
 
 パチンコでも競馬でもなんでも、大人は自らの責任において趣味や楽しみを持つ。
 ならばせきねが何に金を使おうが、自らの責任においてそれは他人に指示されるべきことではない。
 
 ただ、遊戯王カードは、どっぷり浸るには今ひとつ欠けるものがある。それがなんだかは判らないが、最新作にして人気商品の「ロスト・ミレニアム」をまだ買ってもいない。
 かつて Magic;the Gathering を熱心にやっていた時とはかなりの違いである。
 
 当然ながら仕事中に持ち歩いたりしないし、授業中にそういう話だけをして、知らない生徒を置いてけぼりにしたこともない。
 当然すぎるほど当然である。
 それでいて、生徒なり、保護者なり、同業者なりに批判を受けるようなことがあれば「バカですか」とか「空気よめ」とか言うことになるのだろうな、と思う。
 
 今のところはそういうことは無いけれど。
 陰口やら真意やらは見えてこないから、何とも言いようがない。
 

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