芸術鑑賞会

2004年1月10日 演劇
国立劇場。歌舞伎。
演目 「浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)」、「戻橋(もどりばし)」

さすがに難しかったらしい。
中学生も、引率の教員も12時から16時過ぎまでの長丁場で相当しんどかったようだ。

ボク、じつは睡眠3時間。あっさり撃沈するかな、と思いきや、以前と同じように謎に活動限界が来ない。かなりおもしろかった。

 主人公は、山三(さんざ)という武士。
 殺されて名刀を奪われた父親の仇を探そうとしていたところ、岩橋(いわはし)という女性との恋愛が発覚して、主君より追放処分にされる。
 岩橋は吉原に行き、山三は雨の漏る長屋へと別れて暮らすことに。

 その貧乏長屋で、顔にあざのあるお国という女性に好かれる。
 お国は自身の醜さと岩橋の存在とで山三への愛をあきらめて献身につとめていたが、ふとしたことでその気持ちが山三にも理解される。
 そして夫婦となったその晩に、お国の父が山三を殺す謀略のために長屋にやって来る。
 お国は、山三暗殺のために毒が入れられた酒を飲んでしまい、謀略を止めるために父を短刀で刺してしまう。
 暗闇の中で息も絶え絶えなお国の所へ、父の仇が岩橋のもとへ頻繁にやって来るという情報を知った山三が戻ってくる。
 山三は、家の中がただごとではないことに気付きつつも、「岩橋は仮の妻、お国は本当の妻」と言い、夫婦の誓いの水盃を用意させ、編み笠を出させ、武家の妻として家を預けて出ていく。
 毒が体中に回りながらも夫を送り出し、玄関で死ぬ、お国。

 編み笠を被り吉原の岩橋の元へ行く途中、やはり被り物をした武士とぶつかる。互いに顔を見せてみれば、山三が追放される原因をつくった伴左衛門(ばんざえもん)。父の仇という情報のあるその人であった。
 剣を抜き交わし、その後に互いが相手の鞘を手に入れ、剣を収めてみればぴたりとはまる。
 やはり、山三の父が持っていた二振りの名刀は、息子の山三と、奪い取った暗殺者である伴左衛門とが分かち持っていたのであった。

 そして、この後どうなるのか、で終わり。

 っちうお話。

 歌舞伎ってば、江戸時代の町人文化。
 なのに、テーマがすごい。

 自分と恋人が苦しむことになった原因を作った者が、実は永らく探し続けていた父の仇だった。
 おまけにそれが、立ち回りの末に、二振りの名刀の鞘がぴたっと合うことで確実になる。

 醜い容貌で蔑まれる女性が、その真心から、最も愛する人と夫婦になる。
 そしてその日に、大切に思っていた父を刺し、自らも毒によって死んでしまう。

 死ぬと判っていても、敢えて新妻に武士の妻としてのつとめを果たさせる。「おまえこそが本当の妻だ」と言い、「居ない間の留守を任せ」て仇討ちに出かける武士。

 悲劇性もテーマ性も意外性もばっちり。いつハリウッドでリメイクしてもおかしくないと思ったんだけど。
 そう思ったのは、今回のお出かけではボクだけだろうな。
 ただ「つかれた」っていうだけでは、もったいなさ過ぎる。

 ====================

 あ、上のは「浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)」のほう。

 「戻橋(もどりばし)」は、かの有名な、渡辺綱と鬼女のお話。
 「鬼=外人」説とか、「渡辺綱は、実は鬼女の旦那さんの鬼をだまし討ちしていた」説とか考えながら見ていたら、けっこうおもしろいと思った。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索