「呼名」とはどうやら学校の中だけでの言葉らしく、ワープロソフトでは1回の変換で出てこない。
 もちろん、「名前を呼ぶ」という意味だ。
 
 あの名前。この名前。
 
 どんな人の名前であっても。
 決して、単なる識別記号ではない。
 
 犬や猫や鳥や、金魚でさえ、名前をつけるといとおしさが増す。
 
 まして。
 息子や、娘や、自分の家族となる、新たな命への名は。

 この仕事を始めて以来、名簿を見ては思い続けていた。
 ひとりひとりの名には、どれだけの願いと祈りが込められていることだろうか。
 
 公欠で校外へ出ていく生徒の名を、黒板に見るたび。
 わたしは「がんばってらっしゃい」「自己ベストを出せるといいなぁ」と期待し、うれしく思っている。
 
 遅刻や欠席や早退で、出席簿に書き込みをしていくたび。
「なぜ当たり前のことができないのか」「今ごろは体調不良で苦しんではいないだろうか」と悩み嘆きながら考えている。
 
 
 君たちは。
 自身に与えられた名を、心から誇り高く感じているだろうか?
 
 
 ところで、わたしからお願いがある。
 
 卒業証書授与の一番最初の時に。
 今までのわたしの人生で、この上なく誇り高く。
 君たちの名を呼ぶことを許してほしい。
 
 君たちの保護者の思いの、その次ぐらいのいとおしさで。
 わたしのあと幾年かの教員人生を経て、幾百・幾千の人たちと知り合いになったその後でも、なお忘れ得ぬほどの輝きで。
 
 
 こんな願いを、年度初めに思う。

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