門に、至る。

2006年5月31日 お仕事
 ここのところ学級通信に手を付けていない。
 もっとも、そのぶんだけ授業での指導は今までになく行き届いているように感じられる。
 まあその感覚もただの妄想かもしれない可能性もあるのだが。
 
 
 ちなみに、職場では仕事100%にしたいので、わたしはweb巡回をしていない。職場でのweb巡回は遊びとの区別が不分明になっていくような気がしてしまうからである。そうしたい時は早めに帰宅する。そうして検索やリンクをたどってさまざまなことの概略や珍説奇説の類を知ることとなる。
 
 
 羅生門の授業のために、たとえばgoogleで検索をかける。
 キーワード「羅生門」で約52万件。
 そこに「授業」と付け加えると45800件。
 大学付属高校などのシラバスや授業案から、どんな授業が行われているのか考える。
 授業実践を公開している方のページを拝見し、時に考え込み、なるほどと感嘆する。
 大学の研究室や草の根サークルの記録から、斬新な視点を発見する。
 
 そして。
 自分が高校1年生だった時のこと。
 駆け出しの教員だった時、先輩たちがやっていた授業。
 もし恩師ならば、どう授業するか。
 これらに思いをはせながら、自分の授業を組み上げる。
 
 
 実際に「羅生門」の授業を開始する前。
 担任するクラスの雰囲気に注意を払いつつ、授業を通じて何を学んで欲しいのかを自問し続けた。
 教科書に載っている現代文の教材など、極論すれば授業にかけなくても良いとさえ思っている。評論も小説も、世の中には無限と言っていいほど有るのだから。進学校らしく、模試や入試問題の過去問をやったって良いわけだし、それが文字である限り国語の教材にならない物は無いと本気で信じている。(少しの準備時間をもらえれば、『ハリー・ポッター』シリーズ、あさのあつこ『The MANZAI』、井上雄彦『リアル』あたりなら実際の教材として扱えると思う)
 だからこそ、「なぜ勉強するのか」「そこから何を学べばいいのか」は教壇に立つ者が抱えているべきであると考えている。
 
 もちろん、しんどい。
 今回「羅生門」授業するために追うべきものを見つけるためだけに、2日かけてwebをさまよった。
 仕事後の土曜日から日曜の朝、少し休んでからまた起きて日曜、月曜に日付が変わってもなおしばらくかかった。
 わたしが非才であるゆえんである。
 
 そして学ばせたいものに至るまでの道筋を考えて、生徒のつもりになってノートを書く。
 
 実は板書が多い。
 発問の積み重ねによる授業構成をしていない。
 もっと時間をかけて、生徒たちに作業をさせるべきなのであるが、「どんなに時間をかけてでも教室の全員に思考させてノートにそれを書かせるぞ」というところまで決断できない。
 反省すべき点である。
 
 その一方で計画的なノート作りには長所もあると考える。
 欠席した生徒にとって、友人からノートを借りて書き写すという作業だけでもある程度の理解を見込めるのである。また、試験前に見直して理解を深めることもできるだろう。
 小学・中学と比べて、高校の教科書対応問題集など、皆無に等しい。実際に高等部1年で採用している教科書は、市販しているのは役に立たないような教科書ガイド1種類のみ、教員向けの指導書と例題集があるばかりで、生徒が手の届く範囲には復習するための教材など無い。
 
 かくして「センセ、国語ってどうやって勉強すればいいんですか?」と言う生徒と、「地獄へ堕ちるしかないかもね(w」と言う教員との、まことに心温まる会話が生まれるわけである。
 
 国語ができるようになりたいな、と思っても。
 勉強するための物が、実は無い。
 だからおそらく高校の国語、特に現代文分野が、旧態依然として敗戦以来相変わらずビミョーな授業なのであろう。
 やれやれ、である。
 
 
 わたしは言う。
 
 本文を、もし仮にふりがなが振っていなくても、すらすらと読むことができますか。
 
 登場人物が物語の最初と終わりでどのように変化しているか、書いて説明することができますか。
 
 登場人物の主張や心情を、書いて説明することができますか。
 
 ポイントとなる風景描写を、指摘することができますか。
 
 その風景描写が何を象徴しているか、書いて説明することができますか。
 
 物語の主題・テーマを、書いて説明することができますか。
 
 漢字、書けますか。
 
 意味調べ、してありますか。
 
 
 たとえ問題集が無くても。
 こう具体的に指示するのもまた、教員の役割なのだろうと思う。

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