みんな立派になっちゃってまぁ。
 と、全然学年に入ったことのないわたしが思うのだから、かかわった先生たちはまして感慨ひとしおのようで。
 泣いて卒業を祝う先生も。
 その姿を見てもらい泣きする先生も。
 そこかしこにちらほらと。
 
 そりゃそうだよなあ。
 中高一貫で6年間担任でした、なんていうこともあるわけで。
 
 学校のシステムでも何でもなく。
 心をゆたかに働かせて過ごした学校生活だったら。
 泣くほどの感動だってあるわけだ。
 
 それは。
 何も感じずに過ごして涙を流さないどころか感慨もわかない、なんていうより、とてもとてもすごいことだと思う。
 
 
 裏方仕事で式の様子を遠くから眺めていたら、あり得ない人を二人発見する。
 それは、今回の卒業生の授業担当であり、学級担任でいた先生たちだった。
 「どーしてここにいるのよ?」
 思わずツッコミを入れてしまった。
 「『どーして』って卒業式だからじゃん」
 「そうじゃなくてさぁ」
 とぼけた答えについ笑ってしまいつつ、聞いた。
 「今日って平日じゃん。今やっている仕事はよ?」
 「さぼった!」
 「おーい」
 なーんて果断な人たち(笑)
 
 私立の学校は長く教職員が変わらない。これはいつ母校に戻っても恩師が居るということになる。しかし逆に、転勤した教職員とはよっぽどのことがない限り会うことができない。公立では毎年4月に異動が新聞に掲載されて名前を追うこともできるが、私立にはそういうこともない。
 
 今日会わなかったとしたら。
 あるいは、生涯の別れになる。
 
 だから。
 今の勤務地には「休みます」とだけ言って、かつての教え子たちに会える最後の日に、卒業式に、参加したのであろう。
 
 卒業生の退場に教職員が花道をつくる。
 その花道の最後に、当たり前のふりをして立つ。
 
 通り過ぎてから気付き、ゆるゆるとやってくる驚きに目を丸くする者。
 すっかり大人びた男子生徒が、「せんせー!」と叫びながら駆け寄ってくる。
 花束をもらって目をうるませていた女子生徒が、大きな歓声を上げて走り寄ってくる。
 「おめでとう」
 「おめでとう」
 何度も、何度も、何度も、声をかけて握手をしていく。
 
 
 そんな様子を、遠くに見ながら思う。
 あの子たちは、どうしているだろう。
 
 かつて。
 この卒業式から旅立っていった生徒たち。
 あの卒業式から旅立っていった生徒たち。
 
 やっぱりいつも梅の咲く頃だった。

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