とかなくてしす、そして蘇る。
2006年1月29日 日常 コメント (1) うちの高等部の合格発表の様子を、空き時間に見に行っていた。
中学3年生がひとりで、または友人とともに、あるいは保護者とともに、張り出された合格発表を見る。
携帯電話のカメラで写真を撮っている者、どこかに連絡を取っている者、帰っていく者、事務職員の所へ行って早くも入学手続きをしている者、様々である。
不覚にも涙を流し、俯いて足早に立ち去っていく者もいる。何回か入学試験がある中で、出願したそのことごとくに不合格であったのだろうか。当然ながら合否はウチの学校の教職員が出すわけで、その哀れさについ思いを巡らせてしまう。
漠然と人の動きを眺めていたら、ふと、甥っ子を見つけてしまった。
「おまえさん、何でここにいるの?」
いやあり得ないだろという思いだったが、ずいぶん間抜けな質問だった。
「あ、いや、合格発表を見に」
いたずらを見つかった、というような表情で返事をされた。
「聞いてないし!」
「いや、言ってないから」
狼のようなヤツだ、と思った時もあるし、実際周囲ではそう思っているふしもあるらしい。
普段は鷹揚なところもあるし、理非の判断はきちんとできる。けれども怒り出すとどうにも手がつけられなかった。
…ようである。
わたしは、その甥に対して中学校も両親も手がつけられず、他に誰にも助けを求める者がいないのだと泣き付かれてしまって、ある意味やむを得ず月に何度か会いに行っていた。
法律的には全く問題はなかったが、その甥が揉めたことによって、中高一貫で併設の高校には進学できないという処分が下されていた。個人的にはそこまでしなくてもと思ったが、甥っ子は余計に反発し意地になって勉強をしなくなった。学年最下位も取ったらしい。
それでもこちらの立場上、家庭教師なんかできないし、するつもりもなかったので、饗応の類は一切断っている。
そうして甥と話をし、なぜか勉強道具を出してくるので答えられることだけ答えた。中学2年の冬からだった。
1度目に会いに行った時は母親(わたしの従姉に当たる)に請われて様子見で、2度目には部屋に閉じこもりっきりだった。
母親が「せっかく来てくれたのに」と怒り出したら、扉の向こうから壁に穴が開くほど蹴りつけるような物音と、罵声が返ってきたっけ。
「俺は頼んでねぇ!恩着せがましく言うな!」
ああ、こりゃまとまるモノもまとまらないな、って思ったから、母親には場を外してもらって、扉越しに淡々と話した。
「別に金八じゃねぇんだから、ただ母親に頼まれたって家に来るようなタマじゃないの、おれは。おまえが小学のころから知っていて、たまたま来る気になったから来ただけ。」
「おまえさ、どう生きたいの? まわりから受けた苦しみを、全部誰かにぶつけて生きていくつもりか? どうしてもそうするって言うんじゃしょうがないけどさ、おまえにはそうじゃない生き方してほしいと思うんだよね。」
「今日は帰る。おまえが必要だと思ったら、自分で連絡くれ。必要じゃなければどうでもいいから。ま、呼ばれたらなるべく都合つけて来るから」
たしかこんなような話をしたと思う。
それから2、3日してメールが来て。
そうか、もう1年も前か。
「ナイショで悪いけど、ここ受けた。」
「どう?」
「ばっちり合格〜」
嬉しそうに言う。
「何で言わなかったわけ?」
「自分の力で合格したかった。もし身内かなんかで優遇されたらイヤだな、と思ったし」
実に、この甥っ子らしい考え方をしたわけね。
「それに、事前に知らせたら逆に厳しくされそうな気もちらっとだけしたから(w センセはヘンなトコできびしいし」
優遇も冷遇も、どっちも無いからー。
…つぅかこの温厚そのものなせきね(仮名)に対して、「ヘンなトコ」ってどこよ?(笑
「まあともかくも、合格おめでとう」
「うん、ありがとう」
「この期に及んでウチの学校が『高校課程に進学しても良い』とか言ってきた」
「ふーん。すごいねぇ。実力を認めさせたわけだ」
学年最下位から、2度の学年1位。…らしい。甥っ子はせきねの言うとおりにしてみたらなんか成績が上がったと言い、母親ははげしく喜んでいたが、おれは何もしていない。良い意味での余裕と習慣が身に付いたことは良かったと思うが。
「『ということは、俺は悪くないんだということですね』って聞いたら、返事しなかった。別に喧嘩腰じゃなかったのに。だから、あそこには行かない」
「そうか」
私立だっていうだけではその学校の内部事情なんか判らない。その学校にはその学校なりの事情があるのだろう。
ともかくも、自分で決断し努力し、落ち着いてやりとりができている。
大人になっているんだよなー、としみじみ感じた。
「センセ」
「なに?」
「ここに入学したら、センセが担任になる可能性って、ある?」
…飲んでいた缶のミルクティーでむせました。
「なぜに?」
「センセ言ったじゃん。『どこの世界にいても、結局は自分の器量で生きていくしかない』って。ということは、どこの高校に行っても、俺は俺で全てを受け止めるっていうことでいいんだよね?」
…そりゃ、そうなんだけどさ(^^;;;
「なら、俺が受かった高校のどこに行ったって、ある意味俺にとっては同じ、というわけだ。そうしたら、もし可能性があるなら、高校ここでも別にいいかな、と」
「いや、そういうことは言えんから」
「いいじゃん。俺、けっこう良い子だよ? (w」
「自分で言うな、自分で (笑」
別に困らないんだけどさ。
でも困るよーな。
どうなんだろうね。
中学3年生がひとりで、または友人とともに、あるいは保護者とともに、張り出された合格発表を見る。
携帯電話のカメラで写真を撮っている者、どこかに連絡を取っている者、帰っていく者、事務職員の所へ行って早くも入学手続きをしている者、様々である。
不覚にも涙を流し、俯いて足早に立ち去っていく者もいる。何回か入学試験がある中で、出願したそのことごとくに不合格であったのだろうか。当然ながら合否はウチの学校の教職員が出すわけで、その哀れさについ思いを巡らせてしまう。
漠然と人の動きを眺めていたら、ふと、甥っ子を見つけてしまった。
「おまえさん、何でここにいるの?」
いやあり得ないだろという思いだったが、ずいぶん間抜けな質問だった。
「あ、いや、合格発表を見に」
いたずらを見つかった、というような表情で返事をされた。
「聞いてないし!」
「いや、言ってないから」
狼のようなヤツだ、と思った時もあるし、実際周囲ではそう思っているふしもあるらしい。
普段は鷹揚なところもあるし、理非の判断はきちんとできる。けれども怒り出すとどうにも手がつけられなかった。
…ようである。
わたしは、その甥に対して中学校も両親も手がつけられず、他に誰にも助けを求める者がいないのだと泣き付かれてしまって、ある意味やむを得ず月に何度か会いに行っていた。
法律的には全く問題はなかったが、その甥が揉めたことによって、中高一貫で併設の高校には進学できないという処分が下されていた。個人的にはそこまでしなくてもと思ったが、甥っ子は余計に反発し意地になって勉強をしなくなった。学年最下位も取ったらしい。
それでもこちらの立場上、家庭教師なんかできないし、するつもりもなかったので、饗応の類は一切断っている。
そうして甥と話をし、なぜか勉強道具を出してくるので答えられることだけ答えた。中学2年の冬からだった。
1度目に会いに行った時は母親(わたしの従姉に当たる)に請われて様子見で、2度目には部屋に閉じこもりっきりだった。
母親が「せっかく来てくれたのに」と怒り出したら、扉の向こうから壁に穴が開くほど蹴りつけるような物音と、罵声が返ってきたっけ。
「俺は頼んでねぇ!恩着せがましく言うな!」
ああ、こりゃまとまるモノもまとまらないな、って思ったから、母親には場を外してもらって、扉越しに淡々と話した。
「別に金八じゃねぇんだから、ただ母親に頼まれたって家に来るようなタマじゃないの、おれは。おまえが小学のころから知っていて、たまたま来る気になったから来ただけ。」
「おまえさ、どう生きたいの? まわりから受けた苦しみを、全部誰かにぶつけて生きていくつもりか? どうしてもそうするって言うんじゃしょうがないけどさ、おまえにはそうじゃない生き方してほしいと思うんだよね。」
「今日は帰る。おまえが必要だと思ったら、自分で連絡くれ。必要じゃなければどうでもいいから。ま、呼ばれたらなるべく都合つけて来るから」
たしかこんなような話をしたと思う。
それから2、3日してメールが来て。
そうか、もう1年も前か。
「ナイショで悪いけど、ここ受けた。」
「どう?」
「ばっちり合格〜」
嬉しそうに言う。
「何で言わなかったわけ?」
「自分の力で合格したかった。もし身内かなんかで優遇されたらイヤだな、と思ったし」
実に、この甥っ子らしい考え方をしたわけね。
「それに、事前に知らせたら逆に厳しくされそうな気もちらっとだけしたから(w センセはヘンなトコできびしいし」
優遇も冷遇も、どっちも無いからー。
…つぅかこの温厚そのものなせきね(仮名)に対して、「ヘンなトコ」ってどこよ?(笑
「まあともかくも、合格おめでとう」
「うん、ありがとう」
「この期に及んでウチの学校が『高校課程に進学しても良い』とか言ってきた」
「ふーん。すごいねぇ。実力を認めさせたわけだ」
学年最下位から、2度の学年1位。…らしい。甥っ子はせきねの言うとおりにしてみたらなんか成績が上がったと言い、母親ははげしく喜んでいたが、おれは何もしていない。良い意味での余裕と習慣が身に付いたことは良かったと思うが。
「『ということは、俺は悪くないんだということですね』って聞いたら、返事しなかった。別に喧嘩腰じゃなかったのに。だから、あそこには行かない」
「そうか」
私立だっていうだけではその学校の内部事情なんか判らない。その学校にはその学校なりの事情があるのだろう。
ともかくも、自分で決断し努力し、落ち着いてやりとりができている。
大人になっているんだよなー、としみじみ感じた。
「センセ」
「なに?」
「ここに入学したら、センセが担任になる可能性って、ある?」
…飲んでいた缶のミルクティーでむせました。
「なぜに?」
「センセ言ったじゃん。『どこの世界にいても、結局は自分の器量で生きていくしかない』って。ということは、どこの高校に行っても、俺は俺で全てを受け止めるっていうことでいいんだよね?」
…そりゃ、そうなんだけどさ(^^;;;
「なら、俺が受かった高校のどこに行ったって、ある意味俺にとっては同じ、というわけだ。そうしたら、もし可能性があるなら、高校ここでも別にいいかな、と」
「いや、そういうことは言えんから」
「いいじゃん。俺、けっこう良い子だよ? (w」
「自分で言うな、自分で (笑」
別に困らないんだけどさ。
でも困るよーな。
どうなんだろうね。
コメント
どよ、俺にあずけてみる?
それとたまに足跡見てみ〜面白いことあるかも!