学級通信27〜28号。
2004年6月30日 学校・勉強 華麗なる逆転(1)〜(2)
将来、どんな仕事をしたいか。
巧 舟(たくみ・しゅう)という人がいる。「カプコン」という会社で、「逆転裁判」というゲームを作った人だ。(企画とシナリオ、ディレクターを担当)
"いつか、誰も経験したことがないような、新しい探偵ゲームを作りたい"
それが入社以来、6年間の夢でした。
チャンスが巡ってきたのは、2000年8月のこと。
6年も待って、ヘボいモノを作るわけにはいきません。推理モノのおもしろさとは何か? また、それを
"ゲーム"として表現するには、どういう方法を採るべきか? ……トコトン考え尽くしました。
舞台は法廷。ウソを見破られまいとオドオドしている証人。
その気の毒な男に指をつきつけて、
「異議あり! あなたは大ウソつきだ!」と、大声でキメつける弁護士。追いつめられた証人は、
苦しまぎれに、さらにトンでもないウソを繰り出し、事態は予想もつかなかった方向へ展開してゆく……。
推理小説の世界では、1つのジャンルにまでなっている《裁判》。
あんなスリリングな世界が、なぜゲームにはないんだろう?
すべてはこの日の、一瞬のヒラメキから始まりました。
会社に入り、自分の企画によってゲームを作るまでに6年。
巧さんは、今まで考え続けてきたアイディアを実現する第一歩に立つ。
最初の企画書は、1週間ほどで仕上がりました。
2000年、9月1日。
チームのみんなを集めて、初めてのミーティング。とても小さなチームで、ぼくを含めて7人しかいません。
みんな初顔合わせということで、ちょっと緊張気味です。
企画書には自信があったのですが、このときの反響をヒトコトで表現するならば。
"悲惨"
「えー? 探偵ゲームじゃなかったんですかぁ?」
「これならいっそ、弁護士事務所の経営シミュレーションにしたほうが‥‥」
「自分は、弁護士より裁判官になりたいッス」
「主人公をハムスターにしたらイイと思います!」
……それはもう、圧倒的に大混乱でした。
やはり、"裁判"という聞き慣れない題材がマズかったか?
7人しかいないチームが、初日にしていきなり破綻! 思わずアタマをかかえてしまいました。
……このピンチを乗り切って、1つにならなければ……!
6年間やりたいと思っていたことを、1週間かけて企画の文章にまとめ上げた。
しかし、たった7人の会議でさえ話が通じない。
このあと、巧さんはゲーム開発のチームを連れて、裁判所へ傍聴しに行く。
第一歩の「裁判所とはどんな所か」を互いに理解するところから始まったのである。
=============================
巧舟という人が、ゲーム会社に入って6年間かけて、やっと自分のゲームを作れることとなった。初めから開発チームの意思はバラバラで、ようやく大混乱をまとめたと思ったら。
最初にゲームが遊べるようになったのは、11月末日。プロデューサーや部長など、いろいろな人にお披露目したのですが、その結果は……。
完全敗訴。
“ふんだりけったり”とはまさに、この日の我々を形容するために生まれたコトバでした。
ためしに遊んだ誰もかもが、即刻ゲームオーバー。
呆然指数100%。大不評、大酷評の大嵐。
「おもしろくない」
……想像以上のダメージで、頭がくらくらします。“1から考え直そう”ということになりましたが、“でも、そもそも1ってナニ?”という状態。もう、どうしていいかわかりません。
自分の一番やりたいことが、ことごとく周りの人間に伝わっていかないのである。
さらに……。
12月末の仕事納めを目前に、さらに事件が勃発。この大混乱に最後の追い討ちをかけてきました。
7人しかいないチームのメンバーが1人、“一身上のツゴウ”で会社をやめてしまったのです。
……ここに、「逆転裁判チーム」最大の危機が訪れました。
“チームのメンバーが、1人が抜ける”……こう書いても、その圧倒的パワーは伝わらないかもしれません。
“なんだ、あと6人もいるじゃん”と思われる方もいるでしょう。
しかし! これは、まさに致命的な大災害なのです。
ゲームは、いろんなパーツで構成されています。
「シナリオ」
「キャラクターのアニメーション」
「背景グラフィック」
「システム用グラフィック」
「音楽」
「効果音」
「プログラム」
……これだけで、7つあります。1人やめるということは、これらのパーツが1つ、ゴッソリなくなるということなのです。これはもう、ゲッソリという他ありません。
そして……。
1月。ついに我々は小部屋に呼び出され、サイアクの宣告を受けました。
「開発中止」
将来、どんな仕事をしたいか。
巧 舟(たくみ・しゅう)という人がいる。「カプコン」という会社で、「逆転裁判」というゲームを作った人だ。(企画とシナリオ、ディレクターを担当)
"いつか、誰も経験したことがないような、新しい探偵ゲームを作りたい"
それが入社以来、6年間の夢でした。
チャンスが巡ってきたのは、2000年8月のこと。
6年も待って、ヘボいモノを作るわけにはいきません。推理モノのおもしろさとは何か? また、それを
"ゲーム"として表現するには、どういう方法を採るべきか? ……トコトン考え尽くしました。
舞台は法廷。ウソを見破られまいとオドオドしている証人。
その気の毒な男に指をつきつけて、
「異議あり! あなたは大ウソつきだ!」と、大声でキメつける弁護士。追いつめられた証人は、
苦しまぎれに、さらにトンでもないウソを繰り出し、事態は予想もつかなかった方向へ展開してゆく……。
推理小説の世界では、1つのジャンルにまでなっている《裁判》。
あんなスリリングな世界が、なぜゲームにはないんだろう?
すべてはこの日の、一瞬のヒラメキから始まりました。
会社に入り、自分の企画によってゲームを作るまでに6年。
巧さんは、今まで考え続けてきたアイディアを実現する第一歩に立つ。
最初の企画書は、1週間ほどで仕上がりました。
2000年、9月1日。
チームのみんなを集めて、初めてのミーティング。とても小さなチームで、ぼくを含めて7人しかいません。
みんな初顔合わせということで、ちょっと緊張気味です。
企画書には自信があったのですが、このときの反響をヒトコトで表現するならば。
"悲惨"
「えー? 探偵ゲームじゃなかったんですかぁ?」
「これならいっそ、弁護士事務所の経営シミュレーションにしたほうが‥‥」
「自分は、弁護士より裁判官になりたいッス」
「主人公をハムスターにしたらイイと思います!」
……それはもう、圧倒的に大混乱でした。
やはり、"裁判"という聞き慣れない題材がマズかったか?
7人しかいないチームが、初日にしていきなり破綻! 思わずアタマをかかえてしまいました。
……このピンチを乗り切って、1つにならなければ……!
6年間やりたいと思っていたことを、1週間かけて企画の文章にまとめ上げた。
しかし、たった7人の会議でさえ話が通じない。
このあと、巧さんはゲーム開発のチームを連れて、裁判所へ傍聴しに行く。
第一歩の「裁判所とはどんな所か」を互いに理解するところから始まったのである。
=============================
巧舟という人が、ゲーム会社に入って6年間かけて、やっと自分のゲームを作れることとなった。初めから開発チームの意思はバラバラで、ようやく大混乱をまとめたと思ったら。
最初にゲームが遊べるようになったのは、11月末日。プロデューサーや部長など、いろいろな人にお披露目したのですが、その結果は……。
完全敗訴。
“ふんだりけったり”とはまさに、この日の我々を形容するために生まれたコトバでした。
ためしに遊んだ誰もかもが、即刻ゲームオーバー。
呆然指数100%。大不評、大酷評の大嵐。
「おもしろくない」
……想像以上のダメージで、頭がくらくらします。“1から考え直そう”ということになりましたが、“でも、そもそも1ってナニ?”という状態。もう、どうしていいかわかりません。
自分の一番やりたいことが、ことごとく周りの人間に伝わっていかないのである。
さらに……。
12月末の仕事納めを目前に、さらに事件が勃発。この大混乱に最後の追い討ちをかけてきました。
7人しかいないチームのメンバーが1人、“一身上のツゴウ”で会社をやめてしまったのです。
……ここに、「逆転裁判チーム」最大の危機が訪れました。
“チームのメンバーが、1人が抜ける”……こう書いても、その圧倒的パワーは伝わらないかもしれません。
“なんだ、あと6人もいるじゃん”と思われる方もいるでしょう。
しかし! これは、まさに致命的な大災害なのです。
ゲームは、いろんなパーツで構成されています。
「シナリオ」
「キャラクターのアニメーション」
「背景グラフィック」
「システム用グラフィック」
「音楽」
「効果音」
「プログラム」
……これだけで、7つあります。1人やめるということは、これらのパーツが1つ、ゴッソリなくなるということなのです。これはもう、ゲッソリという他ありません。
そして……。
1月。ついに我々は小部屋に呼び出され、サイアクの宣告を受けました。
「開発中止」
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