普段から、帰る時には「机の中を空に」なんていう方針が出ている。
 ……まあ個人的には、「絶対に守らせよう」という気はあまりない。(もっとちがう"勝負のしどころ"が中学生の担任には多すぎるから)
 けれどさすがに、試験中は机の中にモノが入っているとカンニング疑惑とかいうメンドウなことが起こりかねないので、念のために点検している。
 
 そうして見つけたノート1ページ。
 
 人面の、ムカデ。
 
 ただの落書きとして捨ててしまうには惜しい、不気味さと剽軽さの混じり具合だった。
 なんともいえない雰囲気だった。
 
 そうして机の主に聞いたところ、「ああ、それはあいつが描いたンすよ」と隣のクラスの子のことを言う。
 そういえば、放課後には何人もの生徒がウチの教室にやってきて試験勉強をしていたっけか。
 「試験勉強をしなかった者は居残り勉強」ルールが効いているので、ボクはその監督として放課後の教室に居る。そして話ばかりする生徒は追い出してしまっているので、静かに勉強をしたい生徒は逆に好都合と、ウチのクラスへとやって来ているのだった。
 
 あの子がねぇ、と思う。
 明るくて、活発で、素直で、それぞれの場できちんとした言葉遣いもできる。生徒同士でも、教員にも「受けの良い」生徒である。
 それだけ、普通の大人なら想像の外だろうな、と思わせる絵だった。
 でもボクはまあ、すぐにこんなものかなと納得した。
 web上や、放課後や休み時間を眺めていれば、今どきの私立中学生の様子はおおまかに推測できる気がするので。
 
 今日もその子が勉強をしにやって来たから、聞いてみた。
 「キミの絵、どうする?」
 「え?」
 「ムカデ」
 「何でセンセが?」 続きは、知っているのか、かな。
 「ウチのクラスの机の中に入っていたから」
 「わわわ!」
 相当恥ずかしかったようで、声を上げながら逃げていってしまった。
 ……そうか、やはりというか何というか、そういう絵だったのね。
 気持ちはわかる。うん。
 
 心に虫を飼う、か。
 誰だってそういうもんじゃないかな、と思う。
 
 ボクにも、いる。
 
 ボクの場合は。
 飛べない、カラス。

コメント

nophoto
Gustavo
2014年6月24日18:28

You col’undt pay me to ignore these posts!

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